「仮歯は仮住まい?食事で守るテンポラリーライフ」
治療中の食事の工夫 〜仮歯や抜歯後に大切なこと〜
みなさんこんにちは。
「お口の健康から全身の健康を創造する」を理念に掲げる、医療法人ユナイテッドうえはら歯科の上原亮です。
今日は「テンポラリー=仮のもの」というテーマで、歯科治療中の食事についてお話ししたいと思います。
「テンポラリー」とは?
先日、友人のナースが「テンポラリー」と言えば「テンポラリーステント」(心臓の治療で使う仮の管のこと)と答えました。
ゴルフ仲間で不動産業をしている友人は「仮住まいの家」を思い浮かべるそうです。
そして、歯科医師の私はもちろん「仮歯(テンポラリークラウン)」を思い浮かべます。
同じ言葉でも、職業や立場によって連想するものが違うのは面白いですね。
「よく噛むこと」の大切さと注意点
「よく噛んで食べると消化・吸収に良い」
「かたい物を食べると歯の健康に良い」
このような話を耳にされた方は多いでしょう。実際、歯科医学的にもこれは正しい情報です。咀嚼は脳の活性化にもつながり、全身の健康維持に役立ちます。
しかし、治療中の歯は普段とは違い、デリケートな状態になっています。無理に硬いものを噛むと、治療の妨げになったり、仮歯や入れ歯が壊れてしまう原因にもなります。
そこで今日は、歯科治療中によくある3つの場面ごとに、食事の工夫についてお話しします。
① 抜歯後の食事の工夫
親知らずや虫歯、歯周病などで抜歯が必要になることがあります。
抜歯の際には局所麻酔を使うため、治療後もしばらく感覚が鈍った状態が続きます。その間に食事をすると、知らないうちに頬や舌を噛んでしまったり、熱い食べ物でやけどすることがあるのです。
抜歯後の食事のポイント
麻酔が切れるまでは(2〜3時間)食事を控える
当日はやわらかい食事(おかゆ、雑炊、うどんなど)
翌日以降、徐々に普通の食事に戻していく
また、傷の治りを早めるには栄養が大切です。タンパク質や鉄分、ビタミンを意識すると良いでしょう。例えば、冷たいポタージュ、茶碗蒸し、卵料理、鉄分を含むレバーなどがおすすめです。
② 仮歯(テンポラリークラウン)のとき
クラウンやブリッジ治療の途中では「仮歯(テンポラリークラウン)」を装着します。
これは本番の歯が入るまでの“仮住まい”のような存在。見た目や咬み合わせを整える大切な役割がありますが、強度は本物の歯ほどではありません。
仮歯は「テンポラリーセメント」という仮のセメントで支台歯に固定されています。そのため、強い力や粘着力に弱く、外れたり割れたりするリスクがあります。
NGな食べ物の例
フランスパン、焼き鳥(引きちぎる動作が危険)
せんべい、氷、飴(硬すぎて割れやすい)
ガム、キャラメル(粘着性で外れやすい)
工夫すれば楽しめる
「どうしても食べたい!」ときの工夫もあります。
フランスパン → シチューに浸してふわふわに
焼き鳥 → 串から外して小さく切る
せんべい → 4分の1以下に割って食べる
ただし、飴やキャラメル、ガムはどうしても外れやすいので避けてください。
③ 入れ歯・テンポラリーステントの調整中
新しい入れ歯や手術後に使う「テンポラリーステント」は、装着初期には慣れていないため違和感が出ます。
「せっかくだから普通に食べたい」と無理をすると、歯ぐきが傷ついてしまい、痛みから入れ歯を嫌になってしまう方も少なくありません。
慣れるまでの流れ
1〜2週間:おかゆ、煮込み料理などスプーンでつぶせる程度
1か月:少しずつ通常の食事に近づける
例えるなら「新しい靴」。履き始めは靴擦れができるように、新しい入れ歯も慣れるまでに調整が必要です。
また、入れ歯の調整は患者さんの「痛いところ」を目安に行います。そのため、歯科医院を受診する前にはできるだけ新しい入れ歯を装着して咬んでみてください。その方が調整がスムーズに進み、結果的に使いやすい入れ歯になります。
まとめ
歯科治療中は「柔らかいものを食べる」が基本ですが、それだけでは栄養が偏ってしまうこともあります。大切なのは「歯にやさしく、栄養もしっかり取る工夫」です。
また、好きな食べ物を完全に我慢するのではなく「工夫して楽しむ」ことが、ストレスをためず治療を続ける秘訣になります。
当院(呉市のうえはら歯科)では、治療中の食事の工夫や生活上の注意点についても丁寧にご相談を承っています。困ったことや不安なことがあれば、ぜひお気軽にお声がけください。