認知症予防のカギ⑨⑩:Lancet Commission⑨⑩(うつ・社会的孤立/認知刺激不足)
みなさんこんにちは!
お口の健康から全身の健康を創造する医療法人ユナイテッド理事長 上原亮です。
今日のテーマは、認知症予防の国際的な指標として知られる**Lancet Commission(ランセットコミッション)**における重要なリスク因子のうち、
⑨うつ・社会的孤立と
⑩低教育歴・認知刺激不足
についてお話しします。これまでお伝えしてきた「生活習慣」「歯の健康」「運動」「難聴・飲酒」などに加えて、心のつながりと脳の刺激の大切さを考えていきましょう。
■ Lancet Commission(ランセットコミッション)とは?
Lancet Commission は、認知症予防とケアについて世界的な専門家が統合的に整理した国際的ガイドラインです。
最新の報告では、生涯にわたる脳の健康を守るために修正可能な10のリスク因子が挙げられています。
これまでブログで紹介してきたリスク(難聴、運動不足、血管代謝など)に加え、うつや孤立、認知刺激不足も大きな因子です。これらは単独ではなく、他の因子と絡み合い、脳への負荷を高めていきます。
■ ⑨「うつ・社会的孤立」はなぜ認知症リスクなのか?
Lancet Commission では、高齢期の「うつ状態」や「社会的孤立」は認知症リスクを上げると指摘されています。
理由は大きく2つあります。
海馬(記憶をつかさどる部位)の萎縮
長期にわたる孤立やうつ状態は、ストレスホルモン(コルチゾール)を慢性的に上昇させ、海馬の萎縮を促進します。これが記憶力低下の生理的な背景となるのです。活動量と脳への刺激減少
社会参加や対人交流が減ると、脳への刺激量も急激に下がります。これは、**「使われない神経ネットワークが萎縮する」**という脳の可塑性の原則と一致します。
■ 私が訪問診療で見た“独居老人の厳しい現実”
訪問診療でお伺いするお宅には、さまざまな方がいらっしゃいます。特に印象に残っているのは、独居で生活している高齢の患者さんです。
ある日のこと――
白髪の女性の方(80代後半)のお宅に伺いました。家の中は静まり返り、テレビの声だけが響いています。
「今日は誰とも話していない」と彼女は言いました。
食事はエンシュアリキッドという高カロリーの医療用飲み物とカロリーメイトが中心で、歯の痛みを我慢して柔らかいものだけを食べている様子でした。話しかけても反応は薄く、目線はどこか遠くを見ています

私が歯の治療中にも、隣の部屋でテレビの音が大きく流れ、誰にも話しかけられない寂しさが重くのしかかっているようでした。
私はその時、こう感じました。
「この孤立感こそが、脳を蝕む大きな力だ」と。
また、当院の歯科衛生士にケアマネージャーを取得し、現在実地トレーニング中のものがいます。実地トレーニング終了後ケアマネージャーの資格を取得したら、より患者さんに貢献出来たり、担当のケアマネさんと密な関係が今以上にとれるはずです。
■ ⑩「低教育歴・認知刺激不足」とは?
Lancet Commission が指摘するもう一つのリスクは、低い教育歴や認知刺激の不足です。
これは若年期だけでなく、生涯を通して影響します。これは勉強しろというのではなく、慣れたことを繰り返すのではなく、新しいことへのチャレンジも脳は勉強していることになります。
なぜ認知刺激が大切か?
脳には「認知予備力」という概念があります。
これは簡単に言えば、**脳の“予備力”**です。
読書
計算
趣味活動
人との対話
楽器・学習
こうした活動を通じて脳に刺激を与えることが、神経回路を増やし、認知機能低下を遅らせる助けになります。
若い頃に教育機会が少なかった方は、ある意味「スタートラインで不利」とされていますが、生涯学習によって認知予備力を高めることは可能です。
■ 「孤立」と「刺激不足」はつながっている
うつや孤立が認知機能に悪影響を与えるのは、単に「一人でいる時間が長いから」だけではありません。
脳への刺激が総量として不足するという問題が重なっているからです。
訪問診療で出会う独居の患者さんには、
会話がほとんどない
趣味や社会参加がない
動く機会が減った
食事の楽しみが減った
こうした状況が複合的に脳の活性を削っていきます。
■ 医科歯科連携で守る「こころと脳」
ここからが大切なポイントです。
認知症予防は医科だけでも歯科だけでも完結しません。
① 歯科からのアプローチ
口腔ケアで痛みを減らし、噛める食事を増やす
食べる楽しみを取り戻す
来院時の会話で刺激を与える
噛めることは、食事の楽しさだけでなく、噛む動作自体が脳への刺激になります。噛むことで海馬や前頭葉の活動が高まる実証データもあります。
② 医科からのアプローチ
うつ状態のスクリーニング
適切な薬物・心理サポート
運動処方(歩行・体操)
特に社会的孤立に対する対策としては、グループ活動への参加やデイサービスの活用が効果的です。
③ つながる仕組みづくり
訪問診療の際に会話の時間を大切に
地域ケア会議で孤立リスクの共有
生涯学習の機会(講座・読書会)の紹介
これらは単なる“健康指導”ではなく、生活の質を取り戻す医療行為です。
■ 認知症予防の視点で「今日からできること」
ここまでのポイントをまとめると、
「孤立しない生活」をつくる
→ 会話・交流を増やす
→ 趣味や学びを持つ「認知刺激」を日常に取り入れる
→ 読書・楽器・パズル・散歩
→ デジタルでの学びも有効心と体と口を同時に守る医科歯科連携
→ うつの早期発見
→ 口腔機能の向上
→ 社会的参加の機会を支援
これらは単なる“予防のテクニック”ではありません。
人としての生活の質そのものを守る習慣です。
■ 読者の皆さんへ
「最近、人と話す機会が減ったな…」
「以前より本や学びから遠ざかっている」
「運動はしているけど、生活に刺激が足りないと感じる」
そんな方は、今日から少しだけ変えてみましょう。
一歩、外に出る。
誰かに声をかける。
新しい本を手に取る。
脳は使われるほど強くなる臓器です。
医科歯科連携は、単なる医療の連携ではなく、
人生の質を支える連携です。
一緒に、認知症にならない人生を歩んでいきましょう。
Lancet commission の変遷
① 【原点】Lancet Commission 2017
認知症は「予防できる」という概念を世界に示した最初の報告
Livingston G, et al.
Dementia prevention, intervention, and care.
The Lancet. 2017;390(10113):2673–2734.
この論文のポイント
認知症の 約35%は修正可能なリスク因子で予防できる と初めて明示
主な因子:
低教育歴
高血圧
難聴
喫煙
肥満
うつ
社会的孤立 など
**「生涯を通じた予防」**という考え方を確立
② 【アップデート】Lancet Commission 2020
「オーラルフレイル・難聴・社会的孤立」がより重視された改訂版
Livingston G, et al.
Dementia prevention, intervention, and care: 2020 report of the Lancet Commission.
The Lancet. 2020;396(10248):413–446.
この論文のポイント
予防可能割合が 約40% に拡大
新たに追加・強調された因子:
難聴(最大の単独リスク因子)
社会的孤立
大気汚染
外傷性脳損傷
「感覚入力(聴覚・視覚・口腔機能)」の重要性を明確化
③ 【最新版】Lancet Commission 2024
LDL・運動不足・飲酒を含め「45%は予防可能」と再定義
Livingston G, et al.
Dementia prevention, intervention, and care: 2024 report of the Lancet Commission.
The Lancet. 2024.この論文のポイント
認知症の 最大45%は予防または発症遅延が可能
新たに重視された因子:
高LDLコレステロール
運動不足
過度の飲酒
中年期の「血管・代謝管理」が、将来の認知症に直結すると明示
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