認知症予防のカギ② 適度な運動・20分歩く──オーラルフレイル予防から始まる、医科歯科連携による認知症対策
はじめに:認知症予防は「動かす医療」へ
みなさんこんにちは!お口の健康から全身の健康を創造する医療法人ユナイテッド理事長上原亮です。
2024年、Lancet Commission は、認知症の修正可能なリスク因子を再評価し、運動不足(physical inactivity)を第2位のリスク因子として明確に位置づけた。
これは、認知症予防が「薬の問題」から生活機能と行動変容の医学へ移行していることを意味する。
特に注目すべきは、運動が
脳血流
神経栄養因子
炎症制御
社会参加
という複数経路を同時に改善する点であり、単一介入で多面的効果を持つ稀有な予防因子である。
文献が示す事実:運動不足と認知症リスク
Lancet Commission の評価
Lancet Commission 2024 では、運動不足が認知症発症に与える人口寄与割合(PAF)は約7%と推定されている。
これは個人レベルでは小さく見えても、社会全体では極めて大きな予防余地を示す数字である。
代表的国際研究
Laurin D, et al. (2001, Arch Neurol)
中高年期に定期的な身体活動を行っていた群は、アルツハイマー病発症リスクが約40%低下Erickson KI, et al. (2011, PNAS)
有酸素運動により海馬体積が増大し、記憶機能が改善WHO Guidelines (2019)
中等度以上の運動習慣は、認知機能低下および認知症のリスクを低下させると結論
これらの研究は一貫して、
「運動は脳の構造と機能の両方に影響する」
ことを示している。
またハーバード大学の研究で一日20分歩くことが大事との報告もある
✔ 日常的な歩行と認知症リスク(Harvard Aging Brain Study)
ハーバード大学が関与した研究チームは、高齢者(50〜90 歳)を対象に 14 年間にわたり追跡調査 を行い、歩数と脳の機能・病理マーカーを測定しました。
1 日 3,000〜5,000 歩 のグループでは、認知機能低下の開始が平均 約 3 年遅延
1 日 5,000〜7,500 歩 のグループでは、低下開始が 約 7 年遅延
(※ すべて歩数計で測定)
この研究は歩行による認知症完全予防ではなく、
➡ タウ蛋白の蓄積と認知機能低下を遅らせる
という結果を示しており、認知症リスクの修正可能な因子としての歩行の有用性を示しています。
なぜ運動不足が脳を衰えさせるのか(病態整理)
① 脳血流と代謝の低下
運動不足では脳血流が低下し、
酸素
グルコース
の供給効率が落ちる。特に前頭葉・海馬はこの影響を受けやすく、実行機能・記憶障害につながる。
② 神経栄養因子(BDNF)の減少
運動は BDNF(脳由来神経栄養因子) を増加させ、神経可塑性を促進する。
運動不足ではこの刺激が失われ、シナプス形成能力が低下する。
③ 社会的孤立の促進
運動不足は外出頻度の低下を招き、
社会的孤立 → 抑うつ → 認知症
という経路を強化する。
ここで重要なのが、オーラルフレイルとの共通性である。
オーラルフレイルは「運動不足の入り口」
歯科の立場から見ると、
咀嚼機能低下
嚥下機能低下
発話機能低下
はすべて、身体活動量の低下と強く相関する。
噛めない
→ 食事が億劫
→ 栄養低下
→ 筋力低下
→ 外出しない
→ 運動不足
この負の連鎖の起点が口腔機能であるケースは非常に多い。
近年、オーラルフレイルが
サルコペニア
フレイル
認知機能低下
と連続した病態であることが明らかになり、
「口は全身フレイルのセンサー」
と位置づけられている。
医科歯科連携の核心:運動処方は口から始まる
歯科が担える役割
咀嚼・嚥下機能評価
義歯・咬合回復による栄養・活動性改善
オーラルフレイルの早期発見
歯科で「噛める」を取り戻すことは、
運動介入の前提条件である。
医科との連携ポイント
内科:運動処方・慢性疾患管理
整形外科・リハ:安全な身体活動設計
耳鼻科:聴覚機能回復による外出・運動促進
ここに歯科が加わることで、
「動ける・出かけられる・話せる」
という生活機能の回復が完成する。
実践的提案:認知症予防の第一歩としての運動
Lancet Commission も強調しているのは、
**特別な運動ではなく「継続できる身体活動」**である。
1日30分の速歩
人と話しながらの散歩
食事を楽しめる口腔環境の整備
これらはすべて、
歯科・医科が協働して支えられる介入である。
結論:運動不足対策は「口から脳へ」の連携医療
運動不足が認知症リスク第2位である以上、
運動指導だけ
歯科治療だけ
では不十分である。
噛める口 × 動ける体 × 使われる脳
この三位一体を支えるのが、医科歯科連携である。
オーラルフレイル予防は、
単なる口腔管理ではない。
認知症予防のスタート地点である。
主要参考文献
Livingston G, et al. Dementia prevention, intervention, and care: 2024 Lancet Commission.
Laurin D, et al. Physical activity and risk of cognitive impairment. Arch Neurol, 2001
Erickson KI, et al. Exercise training increases size of hippocampus. PNAS, 2011
World Health Organization. Risk reduction of cognitive decline and dementia, 2019
🧠 認知症リスク因子一覧(Lancet Commission 等に基づく)
No リスク因子 影響時期 脳への影響メカニズム 予防・対策のポイント 1 難聴 中年期〜高齢期 脳刺激低下・社会的孤立 補聴器使用・早期介入 2 運動不足 全年齢 脳血流低下・BDNF減少 有酸素+筋トレ 3 高LDLコレステロール 中年期 動脈硬化・脳血管障害 食事療法・薬物治療 4 高血圧 中年期 微小脳梗塞 血圧管理 5 糖尿病 中年期 神経炎症・血管障害 血糖コントロール 6 肥満 中年期 インスリン抵抗性 体重管理 7 喫煙 全年齢 酸化ストレス 禁煙 8 過度の飲酒 全年齢 神経毒性 節酒 9 うつ・社会的孤立 高齢期 海馬萎縮 社会参加 10 低教育歴・認知刺激不足 若年期〜 認知予備力低下 生涯学習 うえはら歯科HP
うえはら歯科ではWEB予約を承っております
下記をクリック↓
うえはら歯科WEB予約
またうえはら歯科では予防医療をお手伝いしてくれる歯科衛生士を募集しております。現在8名の衛生士が在籍しております。
衛生士の仕事を探しておられる既卒の衛生士さん、今衛生士学校の学生で将来衛生士になられる学生さん
まずは見学からいかがですか?
うえはら歯科就職サイト
きょうもご覧いただきありがとうございました!